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インドで勝ち組になる

-インドで成功する多国籍企業に学ぶ- (平成24年新春労使懇談会)

講師      プレム モトワニ (Prem Motowani) 氏
ジャワハルラール・ネルー大学 日本語・日本文学研究会 教授・博士
 
1.インド市場の魅力と問題点
国際協力銀行の「日本企業の海外投資姿勢の今」によると、2010年インドは投資先として中国に次いで第2 位。ここ数年インド進出の日系企業は3倍増、しかしまだ1228社程度であり、インドからの輸出先はUAEがトップで13.4%、アメリカが10.9%、 中国が伸びて6.5% (来年1,000億ドルを超えると予想されている)、日本は 2.0% と少ない。日印のFTAが締結されたがまだ動きは目立たない。
他方、世銀の 2009年報告書では、「ビジネスのやりやすさ」でインドは世界122位。インド日本商工会は2009年、インド政府に建議書を提出、官僚主義と手続きの 煩雑さ、複雑な税制、労働改革の遅れなどの改善、解決を提案している。これらの問題点は日系企業だけが直面するものではなく、例えばインドの企業も、韓国 の企業も同じ条件である。また、製造業では2週間以内に届け出すれば良い自由化が進んでもいる。
2.長期的戦略と人材の有効的な活用 1980年代の自由化の際、スズキとホンダが進出し、今日、もっとも成功した企業となっているが、90年代のさらなる自由化では韓国や欧米企業多数が進出、例えば家電ではサムスンやLGがトップに来ている。 外資系企業の62%が2桁の黒字、17%の企業は最低5年先にバランスすると言っている。長期的戦略が必要で、まず、自分にとって重要かどうか?を決めてかかる必要がある。
インドは、言語を中心にできた多様な28の州があり、異なる州出身の多民族環境で働く経験は貴重である。グローバルビジネスのトップになるにはインドで働け、と言われる。日本企業でも検討してみてはどうか。
Shared Function Approachは、今、欧米企業で流行っているが、ITとかファイナンス、人事とか、特定の機能部門を本社から切り離して、例えばインドに設ける。日本企業ではデンソーが東南アジアを対象に行っているが、まだ日本企業では見られない。
日本企業では、スズキ、ホンダがインドに研究開発センターを持っているが、世界各国の企業に比べるとまだ少ない。インド全土での研究開発人員は約20,000人。人材は海外で教育を受け、インドに戻ってくる。GEが携帯式の心電図をインドで開発、世界に販売したが、現地で開発しなければ現地ニーズはわからない。
地域プロの育成だが、日本では海外勤務 3年、少しわかってきたら交代だが、韓国企業では6年以上、欧米企業では「骨を埋める」育成例が多く見られる。
3.インド市場の特徴
世界の人口70億のうち50億人が貧困層、ほとんどの企業が20億人の富裕層を対象にビジネスをしている。インドは3人のうち1人が貧困層。Popular Business Model と言われる貧困層/未開拓セグメントを対象としたビジネスモデルの開発、インド市場に特化したアプローチが求められる。
運転手つきのクルマ利 用が多いインドでは、運転席にパワーウィンドウをつけても、所有者が座る後席につけないようなクルマは売れない。グローバルブランドであってもインド市場 に合わせなければ受け入れられない。階級意識の高いインドでは、例えば自分のクルマが貧困層向けと見られるようでは都市部では売れない。タタ自動車は、新 規に開発した低価格車「ナノ」の営業不振について、今年のデリー自動車ショーで、貧困層向けとのイメージを変えようとアピールした。物はステータスシンボルでもあるという国柄である。
4.日本に望まれるのは?
インドでは製造業の比率は20%、GDPの65%に貢献している。農業は50%以上の人口が従事していながらGDP貢献15%である。格差がある。雇用創出に効果大の製造業の進出を優遇している。
日本的経営の人気は高い。品質管理のデミング賞やPM賞に挑戦しているのは、世界でも、日本以外で熱心なのはインドだ。共通の食堂や制服などは、コスト面に加え、階級意識の弊害を除く意義もある。
言葉の壁は、インド人が日本に向かう障壁となっている。シンガポールはインド人受け入れの教育や夏期講座などを多数開設している。45万人が教育を受けるべく海外に出ている。例えばアメリカや欧州との経済関係がうまくゆくのは、架け橋になれるそれぞれの文化に精通している人材が多いからだろう。日本との間ではこうした人材が少ない。20年から30年のスパンで、こうした人材育成に投資すべきだ。
公共インフラ不足など見た目のハードルが高く見えてしまうが、一歩踏み込んで見ると、チャンスは見出せる。私自身は、日本の食文化は世界的にも優れていると思うので、これからの進出に注目している。
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