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日本社会の現状から将来へ向けて

平成28年 新春労使懇談会【記念講演】

講師 河口 真理子 氏 大和総研 調査本部 主席研究員

「日本社会の現状から将来へ向けて~CSR・USRの本質とあるべき姿」をテーマに記念講演を行った河口真理子・大和総研調査本部主席研究員は、次のような点を強調した。

 

CSRとは企業の内側と外側を再確認することであり、内側の再確認とは「企業ミッション」の再確認(何のための事業か)に他ならない。注意しなければならないのは企業の内部と外部を分ける枠組み(境界線)は固定されたものではなく、日々、変化するものであることだ。

日本企業における経営者のCSRに対する意識は、スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが導入される中、CSRに対する消極的な姿勢から、積極的な戦略と捉える見方が増え、消極的なコストという見方は減少している。

近年、持続可能な社会づくりに向け、ESG(Environmen=環境、Social=社会、Governance=ガバナンス)の考えがますます重要になっている。その背景には地球の環境容量を超える人間活動がある。異常気象など気候変動は現在進行形で進んでおり、天災による経済的損失は莫大な額になっており、気候変動は経済にとって最大のリスク要因になっている。気候変動は将来の危機ではなく、既にその危機は始まっており、危機をこれ以上大きくしないための「緩和」と同時に、起きている危機へ対処「適応」も同様に重要である。この危機をもたらしているのは、経済∨社会∨地球、という誤ったビジネスの認識であり、経済∧社会∧地球という正しい認識にシフトさせなければならない。

USR(労働組合の社会的責任)については、①ディーセントワーク、②ダイバーシティ・ワークライフバランス・女性活躍、③ワーカーズキャピタル責任投資ライン、の3点が取り組みの3本柱となる。①に関しては、職場だけでなくサプライチェーン全体が問題であることを認識する必要がある。②に関しては、単に女性の管理職を増やすだけでなく、価値観の根本的な転換が求められる。③に関しては、年金基金のオーナーとしての労働組合の重要性を鑑み、ESG投資を主体的に行う必要がある。

持続可能性が問われる時代にあって、社会の価値観・課題が大きく変化している。右肩上がりの物質的経済成長はもはや不可能であり、企業はその本業を通じて社会的課題を解決することが使命となる。

 

こうした時代にあって企業人は生活者の視点を自覚することが大事になる(生活者の1局面としての職業人)。その生活者の視点を醸成する有効なツールは、「ワークライフバランス」と「女性活躍」である。「女性活躍」については、女性の活躍度の高い会社は風通しがよく、男女ともに働きやすい会社であり、労働者を幸せにする会社である。

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